稲刈りの季節となりました。
刈られたイネは、2週間ほど天日に干されますが、その方法は地域によって様々です。全国的には、「はさ木」と呼ばれる物干し竿のように組んだ木に、イネを掛けてゆく「はさ掛け」が一般的ですが、東北地方の平野部では、「杭掛け」と呼ばれる方法で、1本の杭にかけてゆくものが一般的です。

杭掛けのイネ。山形県白鷹町

はさ掛け。脱穀が終わり、藁が干されている。岩手県宮古市川井
その土地の日照、空中湿度、材料となる木などによって、稲を干す方法は様々に変化します。
学生時代に鳥取でウスバシロチョウの分布を調べ歩いていた頃、この稲の干し方に強く興味を惹かれました。ウスバシロチョウは、やや山間部でなければ分布していませんでしたが、春にウスバシロチョウを確認した場所の多くでは、秋にイネを干すはさ木が高く何段にも組まれていました。一方、ウスバシロチョウを確認できなかった平野部では、はさ木は一段で、低い位置に稲が干されていました。
もちろん、これらは目安であって、完全に一致するものではありませんでしたが、空中湿度の高さを知る目安として着目していました。
時の経過とともに、コンバインの普及と、藁の需要が減ったことによって、重労働を伴う杭掛けやはさ掛けをする農家は極端に減少しました。あれから20年。現在再び、今度は地域独自の生活文化の記録として、東北地方で稲の干し方を調べ歩いています。
永幡嘉之